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それなのに、母親であるレヘリーンは、ただの一度しかデイミオンの顔を見にいっていない。そのたった一度のあと、レヘリーンはかよわく泣き崩れて、「息子がこんなふうになっているところは、見ていられない」と言ったのだった。
リアナにはその気持ちはさっぱり理解できなかった。
彼女は毎日、毎朝、執務の前に彼のもとに足を運んでは前日の出来事を報告した。聞こえているかどうかは関係ない。昼食を彼のいる竜舎で取ることもしばしばだった。リアナが来るよりも先に、叔母のグウィナが来ていることもよくあった――ふたりは肩を寄せて励ましあい、愛する者が目ざめるだろう朝を指折り数えて待っているのだ。
レヘリーンが退位したのは戦争責任を問われたせいでもある。謹慎の意味合いもあるのだから、デイミオンの即位式や二人の結婚式に来なかったことはまだいい。だが、フィルバートが国を出奔したとき。そしてデイミオンが、自分の竜アーダルの昏睡に心を痛めているとき。レヘリーンは誰はばかることなく息子たちの側にいてやるべきだったのだ。
それが、リアナが義母に対して抱いているいつわりのない思いである。
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