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結局、五公会の議題はほとんど片付かず、中途半端な幕引きとなった。味方の少ない場で自分たちの側に不利な採決が出たらとリアナはおそれたが、エサルもエンガスもそれほど自領の利益を持ちだすことはなかった。レヘリーンが竜王だった時代の統治を思いだして暗澹たる気分だ、と顔に書いてある。手玉に取りにくくとも、国政に熱心なリアナのほうがまだマシだと思われたのかもしれない。フィルバートはあいかわらずにこにこと聞いているばかりで、政策への意見を出すことはなかった。こればかりはどうしてもデイミオンと比べてしまう。味方をしてほしいわけではなく、少しばかり王配としての存在感を見せてほしいだけなのだが。
せっかく戦時の英雄として一目置かれているのに、フィルはまったく政治的な野心というものがない。〈ハートレス〉として貴族社会から疎外されてきたせいではないか、とリアナは考えている。
レヘリーンが「ベリー摘みに行きたい」とのたまったので、リアナはこれ幸いと案内(という名の監視役)をつけて彼女を追いはらった。どのみち、こんな場所ではまじめな会合にもならない。……エサルは疲れたように肩を回しながら飛竜たちのほうへ歩いていく。エンガス卿が、去り際にリアナに話しかけた。
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