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住民たちから「池」とだけ呼ばれている場所は、屋敷の窓からも見える近さにあり、「湖」と並び領民の憩いの場となっている。
自分も参加するつもりで来たのに、池につくとリアナはすこしばかり疲労を感じた。ちょうど、やや高くなった場所にパラソルと椅子があったので、そこでしばらく彼らの遊びを見まもることに変更した。
夏の緑が適度に日をさえぎり、ヤナギが池にも涼しげな影を落としていた。列を作って泳ぐ鴨に、首が長く優美な雁。地面では亀が甲羅を干している。遠くにはボートハウスも見えた。完璧な夏の光景だ。
「ぼく、青いのを釣ったの」マルがやってきて、リアナに青いザリガニを見せた。
「これは、めずらしい色よ。きれいねぇ」
ザリガニもかわいいし、それを見せにくる子どももかわいい。頭を撫でてやると、マルはよじ登ってきて隣にすわり、さらに話し続けた。
「ぼくゼーゼンから来たの。お母さまはタマリスに行かなきゃいけないし、タマリスには子どもが遊ぶ場所はないからって。それでグウィナが、ヴィクたちと一緒に行けば楽しいよって言ったから」
それは体のいい厄介ばらいにひとしかったが、子どもの手前、リアナはレヘリーンを非難するのはやめておいた。
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