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♢♦♢ ――フィル――
「こんなもの釣って、なにがおもしろいんだ」
さっそくエサに食いついてきたザリガニをバケツにいれ、フィルはぼやいた。魚釣りの神髄は大物釣りと心得ているフィルである。簡単にとれるものは面白くないのだ。
「おまえは昔から、そういうスカしたところがあるよなぁ」リックは糸の先に脂身をつけながら言った。
「あなたの頭は十二歳あたりで成長を止めたらしいな」フィルも言いかえす。
「俺はいつまでも少年の心を忘れないと誓うぞ。三百歳になってもザリガニを釣り、棒きれを見つけたらふりまわす男でありたい」
そして、堂々と宣言した。「諸君、一番たくさん釣ったやつが、正餐でリアナの隣に座っていいぞ。おー!」
「おー!」マルが、つられて拳をふりあげた。
「リアナをトロフィー扱いするな」フィルが噛みついた。
「それ、なにかご褒美になるの?」ナイムはうさんくさそうな顔になった。
「俺は……女とつるんだりはしない……」ヴィクはクールを気どって言った。
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