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「また言ってる」ナイムがあきれたように兄を見た。「最近、ヴィクずっとこうなんだよ。変な病気じゃないかな」
「やせ我慢は、男なら誰しも通る道だぞ。ナイム、おまえにもいつかはわかる」
リックが、さも分かっていると言いたげに深くうなずいた。「古竜は腐肉を喰わず。竜騎手は食わねど高楊枝ってな」
「そんなものかな?」ナイムはうたがわしい顔のままだ。
「そうだぞ。……きれいなお姉さんの前で格好つけたいがために、骨を折ったやつもいたしな」
「どこの誰の話だよ?」ヴィクが興味を引かれたように聞く。
「どこかの竜殺しの、昔のお話」リックがにやりとする。
「そういえば最近は、夫の座を奪えずに、泣いて実家に戻ってきたやつもいたな」
「……俺の話なのか?」
「どこかの竜殺しとは無関係なお話だよ、もちろん」
養父の当てこすりに、フィルはむっつりと視線をそらした。
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