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マルは、一匹釣るごとにいちいちリアナのところに見せにいっている。彼女も楽しそうにこれは大きいだのハサミが立派だのと褒めていた。
頭を撫でられてうれしそうにしている子どもに、リックは目を細めた。
「マルは美女が好きだなぁ。いいなぁ、俺も撫でられたい」
「そんなこと絶対にさせないからな」
フィルは陰うつに言った。「リアナも、なんであんなのにかまうんだ」
「妬くな妬くな」
おとなげない嫉妬はともかくとして、……やはり、彼女の様子が気になった。機嫌よく静かにしているときのリアナは、かえって調子が悪いことが多いからだ。負けず嫌いがわざわいして、周囲に不調を気取られまいとするところがあることをフィルはよく知っていた。
去年の春の、あのタマリスでルーイの竜車に乗ってきたときもそうだったが、自身の体調に鈍感な彼女のそぶりを見ると、フィルはどうしても気になって、いらだちを感じてしまう。どうしてデイミオンは、あんなふうな彼女を放っておけるのかわからない。……近づいていくと、リアナは顔をあげ、笑った。
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