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「あなたもザリガニを見せにきたの?」
フィルはそれに答えず、彼女の頬に自分の手の甲をあてた。それから、額にも。リアナは手の冷たさを感じているように、スミレ色の目を閉じた。
木漏れ日が、白い顔のうえに点描のような影を落としている。薄いまぶたには青白い血管が見え、目の全体にまるい影ができていた。
「顔が赤い。熱があるのかも」フィルはくっきりした眉を寄せた。「……具合は?」
「悪くないわ」リアナは微笑んでから言った。それから、めずらしく本音を言った。
「でも、疲れた。……すこし疲れたの」
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