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フィルそっくりの少年マルは、家令のレフタスに教わりながらレモネードを作っていた。子どもの料理と思いきや、なかなか、凝った品ぞろえだった。ミントシロップ入り、炭酸や、マロウ入りの紫のもの、ブラックベリー入りの甘酸っぱいもの……色あざやかで、いかにも女性にうけそうな飲料だ。
男たちのほほえましい口ゲンカとピンク色のレモネードを楽しみながら、リアナは焼きあがりを座して待った。……空がレモネードと同じ色に暮れはじめたあたりで、フィルが切り分けた肉と野菜を運んできてくれた。
「焼き加減はどう?」
「ちょうどいいわ」
「レモネードは?」
「これもおいしい。バスタブ一杯くらい飲めそう」
隣どうしに腰かけ、食事中の二人はあたりさわりのない話をした。リック自慢の、肉にかける特製ソースの材料について。今日獲ったザリガニは、明日子どもたちが調理するらしいこと。フィルは溜まった書類仕事にうんざりしていること。
「北部より、やっぱり早く沈むわね」夕陽を見て、リアナが言った。
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