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「北部は……」
フィルは問いかけてやめ、しばらくためらってから、手を握ってきた。
「……デイミオンは無事だったんだね?」
確認する口調だった。彼のことだから、すでにそれくらいの情報は得ているだろう。
「ええ」
リアナはうなずいた。「先にタマリスに戻ったわ」
もちろん、彼女にとって完全に無事なわけではない。……デイミオンの中から妻に関する記憶だけが抜け落ちているということを、言うべきだろうか?
だが、フィルはもう彼女の剣であることをやめたのだから、リアナも助けを求めるようなことをやめるべきだろう。力を借りたいといえば、フィルの中に葛藤がうまれ、苦しめることになるだろうから。
「俺がいなくて大変だった?」
フィルはおそるおそる聞いた。
「うん」
リアナは素直に答えた。「でも、慣れていかなくちゃね、おたがいに」
「熱があるし……ここに来てから、体調が悪そうだ」
「あなたやリックの顔を見たから、安心して気が抜けたのかも」
「うちの癒し手には、あなたは診せられないし……」
「明後日にはエンガス卿に診てもらうし、大丈夫よ」
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