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4. きっと、何者でもない二人なら ♢♦♢ ――リアナ――
明け方、一度目ざめたときに、隣で眠るフィルの体温を感じた。幸せな気分でまた少し眠り、朝起きたときには、室内は着替えを手伝う侍女たちのたてる物音に包まれていた。部屋の中央で、フィルはすでに着付けの最中のようだ。そのあいまに、家令のレフタスと打ち合わせをしている。
寝台の上に身を起こすと、気がついたフィルがこちらにやってきた。
「おはよう」
「おはよう。……起こした?」
「ううん、もう起きなくちゃ」
頬に軽いキスとハグをしてくれる。「家族のあいさつだよ」と言い訳するのが、いかにも潔癖なフィルらしかった。さらりと頬にふれ、「体調はどう?」と聞いてくる。
「ずいぶん疲れが取れたわ」
「よかった」フィルは軽く微笑んだ。
「朝食の準備ができる頃だから、着替えが済んだら下に降りておいで」
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