間章 慰霊祭

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 ナイムは、ぶつぶつと文句を言いながらも、マルの面倒も見ていた。 「ぼく、肉にコケモモのソースもかけたい」と、マルが子どもっぽく主張する。 「あれは酸っぱいんだよ。ふつうのグレイビーにしておきな。僕のをひと口やるから」と、ナイムが返す。  取り分けた肉から骨をはずし、ソースをかけたものを回してやっている。 「パンももう一個取る」 「いま取ったやつを食べたらな。ほら、コケモモのやつ」 「うえぇ」マルは大げさに顔をしかめる。「ナイム、これ酸っぱい」 「だからそう言っただろ?」  なんだかんだ言いつつ、世話を焼いてやっているのがわかり、リアナは微笑ましく思った。王都に戻る予定はあるのかと尋ねると、旅の途中で寄れるときには寄る、との返事だった。二人とも、まだまだ自分探しの旅の真っただ中ということだろうか。ただ、シーズンの終わりにはマルを連れて一度、タマリスに戻る予定であるらしい。うなずきつつ聞きながら、北部領の二人の子どもについても思いをめぐらせる。いずれは彼らも王都で過ごす時期がくる……母エリサと同じ顔をした、あの少女が。
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