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それはとてもいい談話だったし、英雄と呼ばれた男にしかできない話だと思った。リアナがそう伝えると、戻ってきたフィルははにかんだ。
「俺は領主にも父親にもなれると、あなたが言ってくれたんだよ。ニザランの、妖精王の城で」
「……そうだったわね」
リアナは遠い目になった。だとすれば、フィルと自分が選んできた道は間違ってはいなかった。……そう思ったが、スターバウの領地に着いてからというもの、やはり感傷的になりすぎている気もした。フィルに甘える気持ちが、まだ自分にはあるのだろう。
庄の有力者たちからもあいさつを受け、お茶をすすめられ……としていると、ポールのまわりで踊りがはじまっていた。
「そろそろ、切りあげても大丈夫だろう」フィルが言った。
「一曲だけ、踊ってから帰りたいな」
なんとなく気恥ずかしくなりながらも、リアナは元夫にねだった。
「あなたは繁殖期にずっと参加してなかったし、夜会で一緒に踊ったこともないでしょ?」
フィルはまじまじと彼女を見下ろしたが、「じゃあ、一曲だけ」と言って、腕をさしのばした。
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