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「俺はこの薄紙みたいなティーサンドで腹をふくらませなきゃならんのか? 荷運び竜みたいに草でも食えと?」
同調者は、意外な人物だった。南部領主、エサル卿だ。リアナ同様「収穫祭の若者」風の衣装を着せられ、野原の上に投げやりにあぐらをかいている。その衣装は短く刈った金髪と野性味のある美貌には意外と似合っているが、長衣以外を着せられるのは本人には不本意なことだろう。手には本人の言葉どおり、腹の足しにならなさそうな優雅でごく小さいサンドイッチがあった。このピクニックは人間の国、イーゼンテルレ風を模しているということだが、人間はこんな少量の食事で満腹になるのだろうか?
リアナは黙って、従者用という名目で持ってきていたパンの固まりを渡してやった。「敵に塩を送る」ならぬ、「政敵にパンを送る」だ。
「恩に着る」かぶりついたエサルの言葉には、珍しく本心がこもっていた。
レヘリーンが、ささげ持った花冠を老齢のエンガス卿の頭に置き、また「どっ」という笑い声が湧いた。それを、リアナは憂うつな思いで眺めている。
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