10人が本棚に入れています
本棚に追加
どこまでも続くような青空の下に、竜の国の最高権力者たちが集結している。
「アエディクラ産の、安価な小麦が自領に流入している。去年の冬から目立つようになった」
会の口火を切ったのは、南部領主のエサルだった。「値崩れが進むと、税が払えず農耕地を放棄する者も出かねん。リアナ陛下におかれては、いかがお考えか?」
「把握しているわ」
リアナは額を指でおさえるようにしながら答えた。「東部領のエクハリトス家からも同様の報告と、減税の嘆願が」
リアナとエサル、エンガスの三名によって、今年度の予算をふりわける駆け引きがはじまった。ここでの決定に王の裁可が加われば、次は竜騎手議会が実際の予算配分を決めていく。実際にはリアナが王の権限を代行している。
野原ののどけさのなか、異国の服装をした権力者たちが円座になって真剣な話し合いをしているさまは、知らない者たちにとってはどこかこっけいに映るかもしれない。
「今年の小麦が実るまで、まだ時間はありますわ」
唐突に、軽やかな声が割って入った。レヘリーンだ。ピクニックの延長のような、のんびりした調子だった。
「それよりも、エンガス卿のあとの五公はお決まりになったの?」
最初のコメントを投稿しよう!