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レヘリーンの青い目と、スミレ色の目がぶつかり合った。
「エンガス卿のあとの、とは……」
言いたいことはわかったものの、リアナはあえて言葉をにごした。
老齢のエンガス卿が政治的な引退を考えているのは周知の事実だったが、かといって待ちのぞむような発言はしたくなかったからだ。王と五公という立場で、いろいろと衝突は多いものの、老大公エンガスは国を率いる上での重要な同盟者である。しかも政治家のおそろしさはここで、後継者のほうが手玉に取りやすいとも限らないのだ。……デイミオンだって、かつて同じようなことを言っていたっけ。
「レヘリーン卿のお心をわずらわせまして、心苦しいことです」
リアナの隣から、当のエンガス卿が淡々と言った。「後継の話もまとまりつつあるところで、よき日を選んでご報告ができると思います」
暗に、「おまえの知ったことではない」と返したわけだが、レヘリーンはにこにことうなずいていた。
「よい後継が得られることを、微力ながら祈っておりますわ。……ところで」
彼女は隣にはべらせている男性を、場に紹介するように引っ張った。イーゼンテルレ風のしゃれた服を着てはいるが、金髪の竜族男性だ。
「ここにいるハズリーは、ニシュク家とも血縁が深いとか聞いておりますわ。乗り手の力をお持ちなのに、さらにイーゼンテルレで医学を修めた優秀な方ですの」
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