アベニールという名の、置屋

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◇◇◇ 『花見会』の案内板。 しっとりと落ち着きのある照明。 クリスタルで出来た桜の花びらが、無数に天井に飾られ、シャラシャラと光って揺れている。 淡い桃色の照明が、大木の桜を思わせる。 幻想的な、非現実の空間。 3月の終わりーー椎名様主催のパーティー会場はまるで秘密クラブのようだった。 煌びやかな仮面をかぶった男女。 桜をモチーフとして、洗練されたオブジェや調度品が置いてある。 効果的でおしゃれな間接照明がますますラグジュアリーな雰囲気を醸し出していた。 椎名が所有するという、一般客は利用できない会員制ホテルの上階。 高い天井。全面ガラスの窓。はるかに眼下に広がる夜景。 立食形式の中央テーブル付近だけは明るく、冷えたシャンパンや豪華な料理が品よく並べられている。 空間にたっぷりとゆとりをもってソファやシート、テーブル席なども置かれ、参加者は思い思いにくつろいで過ごしていた。
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