アベニールという名の、置屋

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「お目当てのウサギは悪い虎に攫われてね。 1人さびしいジジイの相手を頼めるかな」 にっこり笑う茂手木に、茜はピンと来る。 茂手木会長のお目当ては花蓮ーー? 茂手木とゴドーは関係が深いと噂で聞いたことがある。 「わあ、ぜひお願いします」 心音は甘ったるい声で茂手木に大きな胸を押しつける。 「おやおや。 積極的なお嬢さんだな」 「私、まだ21歳なんです。 会長みたいな大人な男性に、い・ろ・い・ろ 教えていただきたいんです」 可愛い子ぶる心音に、茂手木は困ったように笑う。 「アベニールならゴドーがきちんと仕込んでいるだろう? 私は」 茂手木が茜を見つめる。 心音はグイっと茂手木の腕を引っ張った。 「イヤです…会長…お願い。お願いします」 ウルウルと潤んだ目で上目遣いに見つめられーー茂手木は心音に視線を移す。 「やれやれ。 男たるもの女性からの誘いを断るわけにはいかないな… それなら、行こうか」 茂手木が茜に片手を上げ微笑みかけ、茜も微笑んで会釈する。 腕にしがみつく心音の腰に手を回し、茂手木もまた奥の部屋に消えていった。
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