響高校(花蓮の思い出)

3/5
前へ
/103ページ
次へ
「わ…!」 ぐんっと引っ張られて、花蓮は振り返った。 「な…なに…!?」 春樹はほんのわずか目元を染めてーーそれからハッとしたように手を離した。 「あ…ごめん…… あのさ」 「ん?」 「…なんか… なんか困ったら…すぐ言えよな。 まだ高校生の俺なんかに…出来ることなんか少ないけど…さ」 少しぶっきらぼうだけど、温かい人ーー 花蓮はにっこり笑った。 「ありがと。 …じゃあまた」 たたたっと駆けて行く花蓮の後姿を茫然と見ながら、春樹は小さく呟く。 「っ…やっぱ可愛いよな…あいつ… 大人しくて地味だし目立たないから…まだ気付いてない野郎が多くて助かってるけど…」 その声は花蓮には届かなかった。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加