響高校(花蓮の思い出)

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そして迎えた終業式はあっという間だった。 明日から夏休みだ。 花蓮が学校を出ると、どこからともなくスッと赤梨(あかなし)が現れる。 学校に行く時はいつもだ。 赤梨もアベニールのスタッフだ。 若くて、見た目はちょっとチャラい、どこにでもいそうな普通の金髪の青年だ。 会話はなく、赤梨はいつもつかず離れずの距離で、遠巻きに花蓮を見守っている。 アベニールを一般の人に知られたらよくないし、花蓮に何かあってはいけないので、誰かにつけられたりしてないか毎日見てくれているらしい。 電車に乗り、駅で降りた花蓮がマンションのエントランスに入ると、すぐにゴドーが姿を現す。 「…約束通り、誕生日から始めるぞ」 「…はい」 花蓮が立ち止まるとゴドーは花蓮の制服にぐっと手を突っ込む。 ブラに取り付けていた盗聴器を外すと、スーツのポケットに入れた。 アベニールを離れている間、花蓮はいつも盗聴器を付けさせられている。 逃げられないように、という意味もあるのだろうがーー会話や、高校での人間関係ーーそれをゴドーが把握するためだとか。 買われた商品である花蓮は、全ての指示に素直に従った。 アベニールに住む8人の女の内、この時未成年で学校に通っているのは花蓮だけだった。
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