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「鳥の写真ですか?」
「うん、可愛いでしょ?鳥が好きなんだ。」
ニコッと笑って
「だから、鞄にも付けちゃってるんだ。みどりちゃんが拾ってくれたから、こうして話しするようになって、すげぇ、ラッキーだと思ってる。」
白石先輩が鞄に付いてる鳥のぬいぐるみを手でムニュと触った。
そんな風に思ってもらえると思わなくて、心がじわーと温かく感じた。
駅まで歩くと帰宅時間で駅のホームは人だらけだった。
「人が多いですね…。」
「そうだね、帰宅ラッシュと重なったね。」
電車がきたら、電車内も満員だった。
「入れるかな…。」
白石先輩が呟きながら、頭を掻いた。
ドアが開くと人が出てきて横に列を作る。
その後ろに並ぶと
「僕から離れないようにね。」
なんでそんなこと言うのか疑問に思っていると、白石先輩が私の手首を掴んで電車内に入っていた。
それにドキッとした。
こういうことを簡単にしてしまう白石先輩が憎いと思った。
「窓側の方が手すりに掴まれるから、ここにしよう。」
白石先輩が小さい声で言って、向かい合うように立つと手首を手すりに持っていってくれた。
「掴まって。」
至近距離の向かえ合わせにドキドキが止まらない。
恥ずかしくて俯くと
「具合悪い?大丈夫?」
顔を覗き込まれた。
白石先輩にドキドキしていると言えなくて、頭を横に振った。
「具合悪くなったら、早めに言ってね。」
「…はい。」
ドキドキしたまま電車に揺られていると、電車の揺れでたまに白石先輩がこっちに近づくと小さな声で「ごめんね。」と気遣ってくれた。
「次の駅で降りるんだよね?」
「はい。」
「もう少しの我慢だね。」
小声で話しをした。
駅に着くと、ドアの開く前に
「ドアの方を向いた方が危なくないから、1回転した方がいいかも。」
白石先輩に言われて1回転したら
「いたっ!」
白石先輩の足を踏んづけてしまった。
それと同時にドアが開いて、慌てて降りて白石先輩の方を向き直って
「ごめんなさい!」
頭を下げた。
「いいよ、大丈夫だから。気をつけて帰ってね。」
にっこりと笑った。
ドアが閉まると、白石先輩が手を振る。
振り返すのが恥ずかしくてお辞儀をした。
その夜、白石先輩のことを思い出していたら、スマホが鳴った。
画面を見ると白石先輩からだった。
『今、何してた?(-ω- ?)』
白石先輩のことを考えていたなんて言えないから
『宿題してました。先輩は?』
と、嘘をついた。
すると、すぐに返事が返ってきた。
『動画サイトの鳥の映像、見てた(o≧▽゜)o』
白石先輩も動画を見るんだ…と思った。
『そうなんですか。本当に鳥が好きなんですね。』
『うん(^-^)』
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