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白石先輩と連絡を取り合えるなんて思わなかったから、短いやり取りでも嬉しくてスマホを握りしめた。
次の日、いつもの電車に白石先輩がいた。
こっちに気付かないみたいだった。
声をかけようか、悩んでいると
「暁さん、おはよう。」
クラスメイトに声をかけられた。
「おはよう。」
「彼氏さんのとこに行かないの?」
ニヤッと笑って白石先輩を見た。
「え?そんな関係じゃな」
言い終わる前に
「うちらのこと気にしないで、堂々としてればいいのに。行っておいでよ。」
ニヤニヤと笑いながら、なぜか背中を押された。
どうしたらいいか分からないでいると白石先輩がこちらに気がついた。
「あ、みどりちゃん、おはよう。」
ニコッと笑いながらヒラヒラと手を振る。
「おはようございます。」
クラスメイトに見られていると思うと恥ずかしくて下を向いた。
すると、白石先輩が近寄ってきて
「どうしたの?」
不思議そうな顔で覗き込まれた。
「なんでもないです。」
「そうなの?また不機嫌そうな顔に戻っちゃってる気がするけど。」
キョトンとした顔をした。
不機嫌そうに白石先輩に見られているんだと思うと、笑顔を作ろうと思って笑ってみた。
「急にどうしたの?なんだか怖い顔になってるけど。」
白石先輩の顔が驚いて目を見開いた。
「あの…笑ってみたんですけど。どうですか?」
「どうって……もっと自然体で笑った方がいいよ。」
その言葉が嬉しくて、顔が熱くなった。
「そうだ、この間みどりちゃんと行きたい場所があるって話したよね?土曜はどう?」
異性に誘われるのは初めてで心臓がドキッとした。
学校以外で誰かに会うのも初めてだった。
「土曜日ですか?」
「そう。学校帰りは校則を破っちゃうからね。」
クスッと笑った。
「どうかな。」
頭を傾けてこっちを見た。
「はい。…よろしくお願いします。」
「じゃあ、決まりだね。」
白石先輩が「やったぁー」と喜んでいると、電車が駅に着いた。
「じゃあ、また昼休みにね。」
そういうと、白石先輩が先に降りて行った。
その様子を見ていたクラスメイトが
「一緒に登校しないの?」
近寄ってきた。
「そういう関係じゃないの。みんな勘違いしてる。」
「そうだったんだ、ごめんね。でも白石先輩は暁さんのこと、好きそうだよね。」
そんなこと言われると思ってなくて、目を見開いた。
「え?それはないと思う。」
白石先輩は手に触れたりするのも、簡単にやってのけてしまうから。
いつも私だけがドキドキしてる。
「どうして?白石先輩、昼休みも来るじゃん。」
クラスメイトが不思議そうな表情で私を見た。
「白石先輩は私のこと、ただの後輩と思ってるだけだと思う。」
きっとそれだけだと思う。
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