コバルトブルー2

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「嫌がることはしない方がいいですよ、先輩。」 高木君が帰る準備をしながら言った。 それを聞いてか白石先輩の手が離れた。 「みどりちゃん、僕、何かした?」 先輩が悪いわけじゃない。 私の心が苦しがっているだけ。 白石先輩のことを見れなくて下を向いた。 「……なにもしてないです。」 「じゃあ、なんで連絡しても無視したの?」 「……忙しかったんです。」 嘘をついた。 「………分かった。…明日土曜だから、みどりちゃんに見せたい場所があるって話したじゃん?何時に待ち合わせする?」 どうして誘ってくるのか分からなくて 「別の人と行ったらいいんじゃないですか?」 そう言って胸が苦しい。 あの隣に居た女の子のことを思い出した。 思い出すと心臓がチクリとした。 「別の人って誰のこと?」 白石先輩の怒ったような声を初めて聞いて、体がビクッとした。 「………知りませんけど、私なんかと行っても面白くないですよ。」 苦しくて、ここから逃げ出したい気持ちになった。 「どうして私なんかって言うの?僕はみどりちゃんと行きたいんだよ。ちゃんと僕の目を見て話して。」 白石先輩の声が真剣になった。 それでも白石先輩の方を見れないでいると 「みどりちゃん、お願いだから。どうしたの?」 白石先輩を見ると、心臓が痛いし、涙が溢れそうになる。 「先輩が、他の女の人といたから…。」 そう力なく言うと 「それって……嫉妬してくれたの?」 白石先輩がキョトンとした顔になる。 この苦しい気持ちが嫉妬なのかどうなのか分からなくて 「嫉妬……か、分からないです…。」 嫉妬って、あの女の子に? 白石先輩の顔が近づいてきて耳元で 「そんなに僕のこと、好き?」 その言葉にカーッと顔が熱くなる。 白石先輩のことを好きかどうかなんて分からない。 初めてのこの気持ちが自分のことなのに、分からない。 「…分からないです。こんな気持ち初めてだから。」 小さく呟くと 「僕はみどりちゃん、好きだよ。」 少し照れた顔の白石先輩。 「え?」 白石先輩に好きと言われて、苦しさが溶けてドキドキと嬉しさが込み上げてきた。 これが好きってこと? 「みどりちゃんはどうなの?僕は素直に伝えたよ。」 「……私も先輩のこと好きです。」 「みどりちゃん、耳まで真っ赤だよ。」 そう言いながら笑った。
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