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運動会が終わり、紅葉舞う。ある晴れた日のこと。
クラスの男の子が、夕美を中庭に呼んだ。
「さ、佐々木さん」
男の子は顔を真っ赤にして頭を下げた。
「つ、つ、付き合ってください!」
ずっと好きだったんだ。男の子は夕美に告白した。
男の子の名前はタカヒロと言った。
特に目立った感じの子ではないが、夕美は毎朝、タカヒロが一生懸命、校門前の花に水やりをしているのを見ていた。タカヒロはクラスで1番、優しい男の子だった。夕美はタカヒロを好きだと思った。
「わたしも」
夕美がはにかみながら答えた。
「わたしも、ね。好き」
その時だった。
ドライアイスの煙のようなものが、タカヒロの足元からもうもうと立ち昇った。
まばたきひとつすると、タカヒロは目の前からいなくなっていた。
忽然と。最初から目の前に誰もいなかったように綺麗に消えていた。
風が冷たく、夕美の頬を撫でた。
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