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一人の少年が、学校から姿を消した。
クラス、先生、警察……騒ぎは瞬く間に大きくなった。テレビニュースでも繰り返し学校の映像が流れた。タカヒロの両親は何度も学校を訪れた。校長先生の前で、タカヒロのお母さんは泣き崩れた。息子はどこ? と。
夕美とタカヒロが中庭にいるのを見たという証言をもとに、警察や先生は夕美に詰めよった。夕美は怒ったような大人の顔が怖くてただ首を振った。「知らない、タカヒロとはすぐに別々に帰った」夕美の言葉を警察や先生たちは信じ、通学路の捜索が開始された。下校の際は、必ず警察やPTAの大人たちが子供に付き添うようになった。
とても、夕美は口にできなかった。タカヒロが、煙に包まれて消えてしまった、なんて。
でも、黙っていると、夕美は胸が苦しかった。眠れない日が続いた。
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