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川口健太との通信を終えてすぐに坂井星也は船と船の間に交わした仮設通路を渡って通信船に赴いた。
野田和明は約束した通り、談話室で待っていた。四人掛けの丸テーブルが十台ほど並んでいる質素なラウンジだ。野田はその隅っこのテーブルについていた。野田のほかには誰もいなかった。
「何だよ、話しって」
星也は先ほどから感じていた不安を拭うかのように、単刀直入に訊いた。野田は何も言わずに、一枚のメモをテーブルに置いた。
「まずは、それを見てくれよ」
星也は椅子に腰かけながら、メモ用紙を拾い上げた。そこには数字の羅列があった。
<49 31 34 130 33>
「何だよ、これは」
星也はメモを再びテーブルの上に置いた。
「うちの船で一カ月前から、この数字の羅列を時々受信していた」
「一カ月前から? この数字に意味があるのか」
そう言いながら星也は息を飲んだ。
「49は小惑星の数、あとに続く数字は北緯と東経だな」
野田は小さく頷いた。
「一カ月前からと言ったよな。俺たちが小惑星群を見つける前に、どうしてこの数字が分かるんだ」
星也の剣幕に、野田は俯いた。
「分からない。最初は短い時間で何回か受信した。ここ一週間ほどは頻度が多くなった。毎時十回ほどだ。通信の規則性からみても、誰かが意図的に発信しているのは間違いない」
さきほど川口健太が発した言葉が星也の脳裏をよぎった。
<誰かの攻撃ってことはないよな…>
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