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星也が小走りで観測室に戻ると、篠田が興奮した表情でモニターを凝視していた。調査船団は安全のため、衝突地点からみると水平線の遥か外側に位置しているのでインパクトの地表付近は直接見えない。しかし、映像はかなりの高度からのものだったで、衝突エリアを広範囲に映し出していた。
「四十九個のうち、四十六個は千から千五百メートル上空で爆発。残る三個は氷に激突したみたい。ものすごいきのこ雲が上がっているわよ、ほら」
上空から撮影された映像の画面の下半分は靄に覆われていた。恐らく水蒸気の雲だろう。小惑星の大半は上空で爆発したが、その熱と衝撃波は分厚い氷の大半を瞬時に昇華させた。厚さ二百メートルの氷がいっぺんに蒸発したのだから、発生した水蒸気の量と勢いは想像を絶する。
さらに、分厚い靄をかき分けるように、三つの巨大なきのこ雲が空へと突き抜けていた。二つは真っ白、これは水蒸気だけのようだが、最も西側にあるもう一つは黒に近い灰色をしていた。そして、その灰色の雲が最も巨大だった。
「灰色の奴は地表に到達したんですね」
星也が言うと、篠田は灰色のきのこ雲を指さした。
「見て、雷が発生している」
「火山雲と同じですね。粉塵が大量に混じっているんだ」
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