DAYS.1 インパクト

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 時を置かずして、アメリカの衛星画像が届いた。赤外線画像なので、地表付近の様子がレントゲン写真をみるように窺い知ることができた。小惑星群は日本列島があった場所の中国から九州エリアを直撃し、衝突エリアでは平均二百メートルの氷はほぼ消え失せたようだった。真っ白な氷の大陸中に引っかき傷をつけたような衝突エリアの画像は、火星のマリネリス峡谷のようにも見えた。 「ここは広島から山口にかけての海岸線じゃないですか。古い地図の通りだ」  星也は画像をにらみながら言った。 「四国もはっきり分かるわね」 「九州は上半分ってところですか。灰色の奴は九州に落ちたんですね」  灰色の雲は九州のほぼ真ん中から湧き上がっていた。 「阿蘇山があった所じゃないかな」  篠田がぽつりと言った。 「でも、このインパクトが氷の上で良かったですよね。もし、陸地だったら地表は壊滅だし、海の上だったら大津波になる」  星也の言葉に、篠田は無言で頷いた。直径わずか五十メートルに満たない小惑星がたった四十九個飛来しただけで、二十年以上も陸地を閉ざしていた分厚い氷の壁が一瞬にして消え去ったのだ。氷が焼失した面積は何万平方キロに及ぶだろう。二人はそのとてつもないパワーに圧倒されていた。  
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