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ヘリは小一時間ほど周辺を撮影飛行した。
「初回としては、これくらいで充分だろう。そろそろ帰投しよう」
「了解…」
川口の指示に副操縦士が答えた刹那、ヘリが激しく揺れた。下から突き上げられるような衝撃だった。
「何だ」
川口はすぐにレーダーに目をやった。このような空域で攻撃を受けるはずはないのだが、習性がそうさせたのだ。しかし、レーダー上に機影はなかった。
「機体には異常はありません」
副操縦士が報告したが、すぐに機体が再び大きく揺さぶられた。今度はすぐにその理由が分かった。
「あれを撮影するぞ。少し高度を上げよう」
川口は前方に発生した小さなきのこ雲を回避するよう操縦桿を操作した。
「あれは、噴火…ですよね」
恐る恐るといった口調で副操縦士が訊いた。
「間違いない。火山噴火だ」
「どうして急に」
「頭を押さえつけていた氷が消え、地殻が薄くなったんで、マグマが上がってきやすくなったのかもしれない」
ヘリの眼前にある火山のきのこ雲は急速に成長し、高度五千メートル付近にまで上昇してきた。川口は雲に巻き込まれないよう、慎重に操縦しながらきのこ雲との距離を保ち、噴火の様子をたっぷりと撮影した。
「衝突クレーターに火山、当分、ここら辺りには近づけないだろうな」
川口は燃料の残量を気にし始めていた。
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