DAYS.1 インパクト

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 川口ヘリが撮影した阿蘇山の小噴火は序章でしかなかった。最初の噴火で地下のマグマ溜まりに空白が生まれ、そこが崩落して第二弾のカルデラ噴火が起こったのだ。  この山が数万年間隔で何度も経験してきた巨大カルデラ噴火は、最初の噴火が子どもだましに思えるほど巨大な規模で、半径十数キロの陥没地点の境界付近から何百という噴火が同時多発的に発生し、膨大な量の火山弾や灰を噴き出した。それらは小惑星衝突で生じた水蒸気と結合し、周辺の豪雨をさらに破局的なものにした。  上空一万メートル以上に噴き上がった火山灰は、折からの西風に乗り、日本列島のあった場所の広範囲に降り注いだ。最も東では宮城県辺りまで飛んだ。氷雪の上に積もった火山灰は太陽光線を吸収し、急速な雪解けをもたらした。  厄介者と思われた火山灰は、天然の融雪剤として作用し始めたのだった。
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