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2.
「直径はともに百メートル前後。最初の群よりはやや大型ですが、スペクトル解析の結果からみて、岩石を主体とした組成と推定できます」
星也は政府の対策会議にオンラインで参加し、新たな小惑星について報告していた。
「小惑星の軌道から計算された衝突予想地点は、先に通信班が傍受した電文にあった緯度経度とほぼ合致します。旧鹿児島県の桜島周辺です。衝突は三日後の午前十時五分と推定されます」
政府の対策会議は重い空気に包まれていた。
「落下による影響を推定できますか、流田教授」
星也の報告を一通り聞いた大澤首相が重い口を開いた。学識経験者として出席していた流田遥は静かに立ち上がり、語り始めた。彼の専門は地質学だ。
「小惑星は岩石タイプだと思われます。ですと、小惑星の表層部分は大気圏で大半が燃え尽きるでしょう。残った核の部分も地表到達前に爆発、消滅すると想定できますので、地表への直接到達はないと推定できます。しかし、爆発する高度にもよりますが、周囲百キロ近くは爆発の際に高温の衝撃波にさらされます。それが二つ来る訳です。それぞれがどこでどのくらいの規模で爆発するかによって影響範囲は大きく変わってきます」
「船団はこの場所にとどまっていて大丈夫かね」
「それは問題ないかと思います。インパクトエリアは全て氷雪域の上ですから。ただ…」
「ただ?」
流田は言い淀んだ。しかし、意を決したように再び説明を始めた。
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