DAYS.2 降り続く雨

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「この衝突によって、ある事態が発生する可能性は小さくありません。それへの対処は必要となります」 「ある事態とは何だね」  大澤は先を急がせた。会議室全体が流田の説明に集中していた。 「氷の壁が破れて、水路が開かれるかもしれないということです」  会議室は出席者の溜息ともうめき声とも取れる微妙な空気で満たされた。流田は続けた。 「小惑星の衝突で融けた氷雪とその後の猛烈な降雨ーこれらが合わさった莫大な量の水が今、その氷の壁の中に海のように溜まっている訳です。一方、そのプールの縁から四百八十キロ南に行くと、氷雪域の最前線があります」 「というと…」 「つまり、次のインパクトは融雪部分の縁と氷雪域の境目の間なのだということです」 「氷の壁が破れて、インパクトエリアを満たしている水が流れ出るかもしれないというのか」  流田は頷いた。 「九州から中国・四国地方に溜まっている水量は莫大で、その水圧は半端なものではありません。出口を見つけたら、そちらに向かって一気に流れだすのは自然の道理です。そして、動き出した水の圧力が氷を次々と破壊していくでしょう」 「ダムが決壊するように…ということですか」 「ある意味、そのように捉えていただいて結構かと。しかも、それは史上最大のダムです。海が決壊するようなものです。かつて見たことのない規模の土石流が一気に海までの水路を開く可能性は少なくありません」  流田は着席した。
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