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「だが、日本を覆っている水が、氷結する前に海へと流れ出るのは願ってもないことではないのか。教授自身もその方策を考慮していたのではないのか」
大澤の考えを、流田は即座に打ち消した。
「それは流出水量を計画的にコントロールできる場合のみです。九州の半分以上と中国地方を覆っている巨大なダムが一気に決壊するのです。その運動エネルギーは想像を絶します。海へと到達する土石流は莫大な量になり、東シナ海には我々人類がかつて経験したことのないレベルの津波が発生するでしょう」
会議室は一瞬、深い沈黙に包まれた。
「しかし、そのプールの縁とやらが決壊するのは確定的ではないのだろう」
大澤首相の口調は何かにすがりつくようでもあった。
「もちろん確定的ではありませんが、直径百メートルの小惑星の核が最終的に爆発するエネルギーが地表から千メートル以内で放出されたら、九州プールの縁は崩壊します。その可能性は9割以上であると断言できます」
「それが三日後にやってくるというのだな」
大澤は自らに言い聞かせるようにつぶやいた。
「避けられない事態ならばやむを得ん。一刻も早く、世界各国にこのことを報告し、津波への警戒を呼び掛けるのだ。我々もすぐに避難を開始しなければならない」
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