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3.
日本政府は関係国政府の協力を得て、インドネシア諸島の島陰に船団を分散退避させることにした。巨大で足の遅い化学機械船やタンカーが三日で辿り着けるのはその海域までが限界と判断されたのだった。多くの人間が乗り込んでいる居住船は、やや速度が速いので、より安全策を取って、さらに遠方へと全速力で向かうこととし、即時実行に移された。
「津波はどのくらいの大きさになる」
大澤首相は流田遥教授に訊いた。最大船速に上げた司令船上では、対策会議が続いていた。
「それは何とも言えません。どのくらいの水量がどのくらいの時間をかけて海へと流出するかで決まります。時間当たりに流出する土石流の量が増えれば増えるほど、津波は大きくなります」
「最悪の場合を知りたい」
流田教授は瞑目してしばらく考え込んだが、やがて眼を見開いた。
「今、量子コンピュータで計算中ですが、東シナ海では場所によっては百メートルを超す可能性もあります。しかも…」
大澤首相は唾を飲み込んだ。
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