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4.
「一体、誰が何のために、インパクト地点の情報を送ってきたんだ。何か分かったことはないのか」
天文観測船の坂井星也は、通信船で野田和明と会っていた。二隻は津波を避けるため、他の数隻とともに全速力で南に向かっている。
「発信源が少しだけ詳しく分かった程度だ。でも、大勢に影響はない。相手が誰なのか、通信の意図は何なのか、さっぱりだ」
野田は腕を組んだ。星也が言った。
「でも、悪意のある攻撃には、俺には思えないんだよなあ」
野田は大きく頷いた。
「そう思う。攻撃なら不意打ちが効果的だ。前もってお知らせする攻撃なんて聞いたこともない。だがな…」
野田が口ごもる。星也がすかさず続けた。
「そう、結局は地球全体に危機的状況をもたらしている。やっぱり攻撃なのか、そういう気持ちも拭えない」
「みんな同じ疑問を持っていると思うけど、俺は少し違う」
星也は野田に視線を向けた。野田はまっすぐ星也を見た。
「津波は確かに地球全体を危機に巻き込む。日本と同じ船団国家はもちろんだけど、残されたわずかな陸地も危ない。だけど、津波が収まったあとのことを考えると、必ずしも危機とは言えないんじゃないか、とも思える」
「どういうことだ」
「そもそも地球のスノーボール化は、温暖化で両極付近の大量の氷が融けて、海に流れ込んだ真水が海流の大きな循環を止めてしまったことに端を発する」
「海流がストップしたことで、あっという間に極地の寒冷化が加速したのが、スノーボール化の始まりだったな」
野田は小さく頷いた。
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