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4.
衝突地点の割り出しを終え、天文観測船は一息ついていた。二基の人工衛星は小惑星群を自動追尾していたが、地球に向かってくるコースにいささかの乱れもなかった。四十九個の小惑星は七×七の正方陣を組んで、文字通り、一直線に向かってきていた。
「あとは待つだけね」
篠田かおりがコーヒーカップを口に運んだ。
「アドレナリンがどっと出たみたい。喉がカラカラ」
篠田が笑うと、緊張が解けた坂井星也も追従笑いをした。
「久々ですよね。こんなこと。僕らの船が脚光を浴びるなんて」
「初めてじゃない? そもそも日本を脱出するときに、天文観測船不要論だってあったんだから」
「建造しておいてよかったですよね。不要論を唱えた奴らは反省すべきだ」
篠田は口元を緩めた。
「不要論を振りかざした政治家たちは皆死んじゃったわよ。三十年以上前のことなんだから」
「それもそうですね。でも、何だか悔しいな。不要論を唱えた人たちを見返してやるチャンスだったのに」
星也が言ったのと同時に、船間通信装置が鳴った。すかさず星也が応答した。
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