第二話

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第二話

「本日からこちらに配属となりました、明石虎昌(あかしとらまさ)と申します。 よろしくお願いいたします」 「よく来てくれたね。 僕は”下士隊”東京支部支部長の小西です。よろしくね」 「よろしくお願いいたします!」 「僕らみたいな下士は、夜間の町の見回りだったり 雑務が主にはなるけれど、一緒に頑張ろうね」 邏業は9つの階級と、通称”黒霧(こくむ)”と呼ばれる隠密隊による 10の隊で成り立っており、階級順に、 下士隊(かしたい)/上士隊(じょうしたい)/尖斬隊(せんざんたい) 統守隊(とうしゅたい)/守館(しゅかん) 抜刀隊(ばっとうたい)/警視隊(けいしたい) 副大警視(ふくだいけいし)/大警視(だいけいし) という名称がついている。 「ところで明石君、君は農民の出だと聞いているのだけれども、 それは本当かい?」 「はい、本当です」 邏業に入隊する者は、そのほとんどが士族出身だった。 士族とは、江戸幕府の頃でいうところの武士階級であり、 当時はまだ拳銃が世にあまり出回っていなかったこともあり、 犯人逮捕の際は、刀での戦闘が主であった。 そのため、邏業に入隊する者のほとんどが 刀の扱いに慣れている士族出身であった。 「もしかして、刀も握ったことが無いとか?」 「・・・はい」 僕が引け目を感じているように見えたのか、 小西は僕の肩をポンと叩くと、 「いやいや、すまない。 別に、君を笑いものにしたくてこんな質問をしたわけじゃないんだ」 そう言った。 「はい、わかってます」 「ただ、僕らも下士とはいえ、町の安全を守る以上 危険とは隣り合わせにある身だからね。 自分の背中を預けることができるかどうかは きちんと知っておきたいからさ」 彼に悪気が無いことは、重々承知していた。 下士とはいえ、夜間の見回りで人斬に襲われた者も少なくない。 いざという時のことを考え、個人の力量を事前に把握しておくことは 至極真っ当なことだ。
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