デートのような〜中学生編〜

3/4
前へ
/66ページ
次へ
 ファストフード店を出てから、尚政の手が一花の手を繋いだまま離そうとしない。先ほど告白(まが)いのことを口走ってしまったからだろうか。    からかわれてるのかな? これじゃあ本当のデートみたい……。 「あの……なんで手を繋いでくれるんですか?」  一花が困ったように聞くと、尚政は不敵な笑みを浮かべる。 「……一花ちゃんてさ、言葉選びが面白いよね。この場合は俺が繋いでるんだから、『なんで手を繋ぐんですか』とかじゃないの?」 「だって私が告白紛いのことをしちゃったから、気を遣ってくれてるのかなって思って……」  本当はさっきの言葉だって簡単に言えたわけではなかったが、尚政との関係を続けるための理由を探し求めてしまったのだ。 「まぁきっかけはそれだけど、残念ながら意図は違うなぁ」 「意図?」 「そう。気を遣ってるんじゃなくて、一花ちゃんの反応を楽しんでる」 「……やっぱりからかわれてるんですね」 「こんな俺、幻滅しちゃった?」 「……そうでもないです。先輩といると楽しいから。新しい発見が出来たみたいで嬉しいかな。それにこっちの先輩の方が、いつもより生き生きしてる気がしますよ」  楽しそうに話す一花の言葉を聞いて、尚政は言葉を失った。まだ出会ってから日が浅いのに、この子は俺の性格を見抜いて、しかも欲しかった言葉をいとも簡単に言ってのけた。  本当はいたずらしたり、からかったり、ガキくさい男なんだ。その性格を否定されてから、わざと隠すように生活してきた。でも本心は、こんな俺も認めて欲しいとずっと思っていた。  まさかそれを中学生の一花に言われ、尚政は衝動を受けた。この子って本当に不思議だ。中学生みたいな子どもらしい部分もあれば、中学生とは思えないくらい大人な部分もある。ただ、今の尚政にはどちらの一花も重要だった。  尚政はわざと一花の耳元に顔を近付ける。 「ねぇ一花ちゃん、今日の服かわいいよね。俺のために選んでくれたの?」  耳にかかる息がくすぐったかったのか、一花は変な声を上げて背筋をピンと伸ばした。 「……あっ、あの……やっぱり先輩にかわいいって思ってもらいたいから、動けるかわいい服にしてみました……」 「うん、すごくいいと思うよ」  先輩の言葉が私だけに向けられていると思うと、すごく幸せだった。 「どこか行きたいところある?」 「……先輩の行きたいところは?」 「俺? そうだなぁ……ゲーセンとか?」 「先輩ってゲーセンとか行くんですか?」 「行くよ〜。クレーンゲームとか大好きだもん。一花ちゃんは?」 「うちは両親が好きなので、よく一緒に行きますよ。私は苦手だけど」 「へぇ、なんか素敵なご両親じゃない。じゃあこれから行ってみる? 欲しいのあったらとってあげるよ」 「い、いいんですか?」  一花が目を輝かす。その様子に尚政も興味を惹かれた。 「……何か欲しいのあるの?」 「実は集めてるキャラクターがいて、もし新商品が出てたらいいなって思って」 「ふーん、出てるといいね」  尚政が言うと、一花は嬉しそうに頷いた。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

702人が本棚に入れています
本棚に追加