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タイマーのスタートボタンを押した瞬間、私は卵を2個割って掻き混ぜる。隣ではフライパンに火をつけつつ、油を引いていた。
「卵入ります」
「ん、ご飯もちょーだい」
まずは卵を流し入れて、その後すぐにご飯を投入。軽く塩胡椒を振りつつ、少しの間様子を見る。
「……そろそろいいかな」
玉ねぎ、長ネギ、チャーシューも投入して、具材を馴染ませつつ炒め合わせる。最後に醤油を鍋のふちからぐるりと回しかけてもう一度混ぜ合わせたら完成だ。
皿2枚に高さを出して盛り付け終わったと同時に、タイマーの音が鳴り響く。
「っしゃ、セーフ!」
「間に合いましたねぇ……」
テーブルに運んで向かい合い、手を合わせる。
『いただきます』
口に運んだチャーハンは、誰が食べても大成功とは言い難いだろう。ご飯は一部ダマになっているし、玉ねぎは半生で、調味料も全体には行き渡っていない。
正面の河城先生も微妙な顔をしていて、同じようなことを考えているのは明らかだった。
「私達、大事な休日に何してるんでしょうね?」
そう呟くと、河城先生が苦笑する。
「正直何回か思ったけど、言ったら負けなような気がしてた。……なんか、馬鹿みたいにはしゃいだなぁ」
「馬鹿みたい、っていうのは否定しませんけど……でも、楽しかったから良いですよ」
「……おー、そうだな」
いい歳した大人2人ではしゃいで夕飯作りをしていた、なんて考えるとやっぱりちょっとおかしくなって、思わず2人で声を上げて笑う。
笑い声が、夜空に吸い込まれていった。
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