12

8/13
前へ
/191ページ
次へ
翌日は土曜日で、今の生活を始めてから初めて二人で過ごす休日になった。 昨夜は(も)激しかったし、今日は家でゆっくり過ごすのかなと思っていたら、珍しく高嶺くんの方が私より先にベッドから起き上がった。 「じゃ、行くか」 「行くってどこに?」 あちこち痛む体を起こしながら尋ねると、高嶺くんが久々に八重歯を見せて笑った。 「ジュエリーショップ巡り」 なんて意気込む高嶺くんと出かけたまでは良かったけれど。 周りのカップルの甘っっ々な雰囲気。 ショーケースに並ぶ、目が潰れそうなほどの輝きを放つダイヤモンドリングのお値段。 忠犬のように後をついてくるショップ店員さん。 どの店でもその全てに私が完全に気後れしてしまい、三軒回っても目星すらつけられなかった。 「ま、別に今日決めなくてもいいから」 休憩するために入ったカフェで、ちょっと疲れた顔をした高嶺くんが、ブラックコーヒーを啜りながら言ってくれた。 高嶺くんにとっては二ヶ月ぶりの貴重なお休みなのに。 申し訳ない気持ちで消えたくなっていると─ 「…それとも決められない理由が他にあるとか?」
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4738人が本棚に入れています
本棚に追加