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「勘違いするなよ」
こんな高嶺くんは出会ってから初めて見る。
声も、表情も、人形のように冷たい。
「こいつはともかく俺はアンタに普通の結婚報告をしに来たつもりは毛頭ない」
「何よ、それ。どういうことよ?」
曲がりなりにも母親だからなのか、お母さんは全く動じずに聞き返した。
「コイツの家はうちと違ってマトモなんだ。だから、俺の母親がどういう人間かその目に焼き付けさせて、これから先、俺のいない所で母親ヅラして近づいてくることがあってもフルシカトするよう教え込むためにこんな微睡っこしい手を使ってまでアンタに会わせたんだよ」
畳み掛けるように言われると、さすがのお母さんも、高嶺くんとは対象的に、顔をみるみる赤くさせた。
「な…っ、何よ!アンタみたいなろくでもない息子なんて、一生会いに行くつもりなんてなかったわよ!!」
「…そうだよな。高校受験を目前に控えた三者面談にすら来なかったような母親だもんな。でも、そろそろ親父にイチャモンつけてふんだくったカネも底をつく頃だろう?俺が弁護士やってるって聞きつけたらどういうことをしでかすか予想がつかないから、念の為の保険だよ。お母さん」
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