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高嶺くんの後ろに身を隠すようにして身構えていたら─ 「えーっ!そうなの!?おめでとう!!」 桐嶋先生が、恨み節全開モードから打って変わって、祝福してくれた。 「まあ、あそこは、父から引き継いだ会社の中でもかなり古い体質だったから、遅かれ早かれこうなってただろうし。賠償金の一部が二人の門出の支度金になったと分かって溜飲も下がったわ。私からのご祝儀ってことで」 「ありがとうございます」 「あ、ねえ、そう言えば、もしかして奥さんって…」 高嶺くんに何やらヒソヒソと耳打ちし、キャッキャとはしゃぐ様子から、桐嶋先生って仕事相手としてはかなり手強そうだけど、気さくでいい人なのでは? じゃ、どうしてあの(・・)高嶺くんが、さっきあんな風に緊張した様子で立ち上がったんだろう? その答えはすぐに分かった。 それまで一言も発さなかった桐嶋先生のダンナさんが、「近い」と低く呟き、談笑する高嶺くんと桐嶋先生を「ベリッ」と音がしそうな程の勢いで引き離したのだ。
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