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「三角さん、好きです!!」
突然ですが、私、三角静花、今まさに、お客様に襲われかけています。
仕事柄こういうことは今までにも何度かあったから、気をつけていたのに。
食事を終えた帰り道、いきなり人気のない路地に引きずり込まれ、羽交い締めの如く抱きすくめられてしまった。
「と、徳永さん!困ります!!お客様とのこういったことは禁止されていますから」
しくじった。
あと少しで任務完了ということもあり、気が緩んだ。
「いやだ!貴女にもう会えないなんて!!僕は貴女じゃないとダメなんです!!お願いですから結婚してください!!」
徳永さん、さすが長年柔道一筋で女性になんて見向きもせずに生きて来ただけのことはある。
これまでの相手とは違って、掴まれた腕を振りほどこうとしてもびくともしない。
それどころか、女性の扱いを知らない柔道家の屈強な腕には、私を離すまいとますます力がこもって─
く、苦しい…。
これ、本当に失神する…。
死にはしないだろうけれど、脳が誤作動を起こしたのか、これまでの人生が走馬灯のように駆け巡る。
記憶の奥底に封じ込めたはずの、彼との出会いまで─
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