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第3話 思い出の海で
―――
絵を見終わって出て来た僕たちは、自然と駅への道を二人で並んで歩き出していた。
「いや~、すごかったなぁ。でも良い経験になったよ。ありがとう。」
「いえいえ、僕の方こそありがとうございました。来て頂いて。」
「あのさ、敬語やめない?」
「え?でも……」
突然の彼の言葉に僕は戸惑う。だってどう考えても、彼の方が年上だろうし……
彼は迷ってる僕の顔を覗き込むようにして見ると、笑った。
「俺、敬語嫌いなんだ。友達同士にはいらないでしょ。」
「友達?」
「おぅ。俺ら友達だろ?圭吾。」
満面の笑顔でそう言う彼に、僕の顔はかぁ~っと熱くなった。自分の名前が、どこか特別な響きを持って心の中に浸透していくのを感じていた。
「うん!邦宏くんって呼んでもいい?」
「もちろん。」
自分の口から出る彼の名前も、特別なものに聞こえた。
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