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その日から僕と彼は、ちょくちょく会うようになった。
買い物したり、ご飯食べに行ったり、映画を見に行ったり……
彼にとっては、ただ友達と遊んでるってだけだったかも知れないけど、僕にとってはデートみたいだった。顔を見ればドキドキして、肩や腕がちょっと触れただけで顔が赤くなって……
まるで中学生みたいで恥ずかしかったけど、僕は彼とこうしているだけで幸せだった。
「邦宏くん。」
「ん?」
「これ、邦宏くんに似合いそう。」
「え、どれ?」
今日も二人で洋服を選びに来ていた。邦宏くんに似合いそうな服があったから彼を呼ぶ。彼は近付いて来て、僕が持っていた服を手に取った。
その時、手と手が触れ合う。僕は思わず手を引っ込めていた。
「圭吾?」
「ごめん、何でもないよ。どう?これ。似合いそうじゃない?」
「そう?」
鏡に向かって服を体に合わせている彼の左手に、目が惹き付けられた。
彼と会う度、彼への想いはふくらむ一方で、その指輪からの無言の圧力に押し潰されそうになる。それでも僕は、負けずに睨み返すんだ。
――僕だって、彼を愛しているから……
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