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―――
そしてあの日――
僕は彼に連れられて、彼の地元に来ていた。偶然にも僕たちは地元が近い事がわかり、それだったらとお互いの地元を案内しようという事になったのだ。
今日は朝から彼の案内で色んな所に行き、最後に行き着いたのは、海だった。
砂浜に並んで立った瞬間、初めて彼の事を思って描いた絵を思い出した。……似ている、と思った。
ここから見る景色と、あの時描いた絵が……
僕は立ち尽くしたまま、しばらくじーっと海を見つめていた。
「ここさ、俺の好きな場所なんだ。ガキん頃からいつもここに来て、こうやって海を眺めてた。」
邦宏くんの声が心に響く。僕は真っ直ぐ前を見つめたまま、口を開いた。
「僕、邦宏くんが好き。」
何も考えずに、言葉が口をついて出ていた。驚いている気配を隣から感じたが、僕はもう止まらなかった。
「好きだよ。初めて会った時から。男同士だとか、そんな事は関係ない。僕は邦宏くんが……」
「圭吾。」
突然遮られた言葉に、僕は彼の方を振り向いた。彼は困った顔で僕を見ていた。
「ごめんね、邦宏くん。そんな顔させて。でも……」
「違う、違うんだ。お前が謝る事じゃない。」
またしても僕の言葉を遮った彼は、少しだけためらった後、僕を真っ直ぐ見つめてこう言った。
「俺も、お前が好きなんだ。」
「え……?」
僕はビックリして、彼を凝視した。
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