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―――
「俺も初めて会った時から、初めてお前の絵を見た時からお前が気になってた。こんなキレイな絵を描く人は、一体どんな人間なんだろうって。だから最初は、友達になりたいって思った。でも一緒にいるうちに、段々と気持ちが変わってきて、気付いたら好きになってた。」
「邦宏くん……」
呆然と彼の言葉を聞いていた僕の目からは、自然と涙が零れていた。
「ごめんな、圭吾。でも俺は……」
「わかってるよ。邦宏くんには大切な人がいるって事。でも僕の事、そう思ってくれただけで、僕は幸せ。ねぇ?二番目でもいい。浮気でいいから、僕の側にいて?」
「そんな!浮気なんて……」
「ううん、それでいいの。あなたの隣にいられるのなら、それでもいい。」
僕はそっと彼に近付く。彼はじっと僕の目を見つめていた。
ゆっくり彼の背中に腕をまわして抱き締めると、戸惑いながらも抱き締め返してくれた。思わずほっとため息がもれた。
「邦宏くん、ありがとう。」
「あぁ……」
―――
そしてこの日から、僕たちの関係は始まった。
二人でいられれば、棘の道はキレイな花畑になると信じていたのは、最初だけ。
辛くて苦しい恋もあるのだと、僕は初めて知った……
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