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背景は、白と黒。その境界線には真っ赤な円があった。
そしてそれは、真ん中からキレイに真っ二つに別れ、間からは青い筋が何本も垂れていた。
暗くてどんよりとして、グロいんだけれど、どこか眩しくてキレイで美しい。何故か惹き付けられて、僕でさえ我を忘れて見入ってしまう程。
しばらく見つめた後、彼はほっと息をつくと僕を見た。
「すごい、すごいよ、圭吾。」
「本当?」
「あぁ。マジで芸術って感じ。上手く言えないけどすげぇって事はわかる。」
「気に入ってくれた?」
「あぁ。」
「良かった。それ、僕の気持ちだから。」
「え?」
首を傾げる彼を見て、僕はにっこり微笑んだ。
邦宏くん?僕のあなたを想うこの気持ちは、キレイなものではないのはわかってる。十分すぎるくらいに。汚くてドロドロして、真っ黒な闇の中にいるみたい。
でも反面、こんなにキレイで美しいものがこの世に存在するのだと、この僕の中にあるのだと、初めて知った。それを教えてくれたのは、他の誰でもないあなた。
他に大切な人がいる人の事を愛してしまった僕は汚くて、だけどキレイなんだ……
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