第1話 偶然の出逢い

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――― 彼は甲斐邦宏。一流商社に勤めるサラリーマン。 仕事に対して真面目で、自分にも他人にも厳しいけど、仕事以外ではその明るい人柄と誰にでも優しい性格で、男女問わず人気者だ。 そして一応、僕の恋人。 男同士だとかそんな事気にしてたのは最初だけで、今ではこうして二人でいられればそれで良かった。 「圭吾?」 「え?」 「どうした?ボーっとして。座れよ。」 「う、うん……」 邦宏くんが怪訝な顔で僕を見る。僕は慌てて隣に座った。すぐ側に邦宏くんのぬくもりがある。 僕はそっと彼の肩に頭を乗せた。 「ん?」 「ふふふ。邦宏くんだぁ~」 「俺じゃなかったら、誰だよ。」 「んふふ。」 邦宏くんの心地良い声を聞きながら、僕はふと視線を移した。 「…………」 「圭吾?」 何も言わなくなった僕を不思議そうな声で呼ぶ。それでも僕はそこから目を離せなかった。 白く残った指輪の跡。 左手の薬指に刻まれたそれは、無言で僕を睨んでいた…… 「……ごめんな。」 「邦宏くん……」 僕の視線に気付いた邦宏くんは、その手でそっと僕を抱き寄せる。逆らうすべを知らない僕は、されるがまま邦宏くんの胸の中に収まった。 「圭吾、ごめんな。」 「……謝らないで。僕が悪いんだ。邦宏くんを好きになったから……」 「いや、全部俺が悪いんだ。お前は悪くないよ。俺が弱いから……」 そう言うと、僕の肩に顔をうずめてくる。僕はそっと手を伸ばして、邦宏くんの頭を撫でた。 .
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