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病院内の僕と同じ小児科に「夢咲 和音(ゆめさき かずね)」さんという僕より2歳年上の女性看護師がいる。
夢咲さんは病気で入院している子供たちと、いつも笑顔で元気に接するため多くの子供達から人気がある。
僕にとって、そんな夢咲さんは気になる存在だった。
僕が夜勤のある日、22時を過ぎた頃にナースステーションでパソコンを操作していると、夢咲さんも夜勤で、
「月城先生、見回りに行ってきます。」
と僕に声をかけてくれた。
「はい、よろしくお願いします。」
と僕が返事をすると、夢咲さんは笑顔で頷いてナースステーションを出ていった。
少しして僕がお手洗いに行くためにナースステーションを出て廊下を歩いていると、病室から夢咲さんの声が聞こえてきた。
どうも眠れない子供がいたようで、夢咲さんはその子供とお話しているようだった。
僕がお手洗いを済ませてナースステーションに戻ろうと廊下を歩いていると、さっき話し声が聞こえてきた病室から歌声が聞こえてきた。
どうも夢咲さんが子守歌を歌って子どもを寝かせつけようとしているようだった。
その時僕は、その子守歌に何となく聞き覚えがあって、病室の前で耳を澄ませて立ちつくしてしまった。
その子守歌というのは、
「沼津へ下れば千本松
千本松原小松原
松葉の数より まだかわい
ねんねんころりよ おころりよ」
という詩だった。
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