【2】

4/7

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
 賑やかだったり、クラスの中心で騒ぐようなタイプの女子ではないけれど、かと言って地味なほうというわけでもない。  落ち着いてはいるけど、仲の良い友達の輪の中では、市來さんは常に真ん中にいるような気がする。成績も良いらしく、クラス内では皆から一目置かれている存在だ。  男女問わず人当たりもいい。清楚、というのは市來さんのような人のことを指すのかもしれない。普段からぼーっとしている僕からすると、なんだか、まぶしい人だった。  ビニール傘一つでああだこうだ言ってる僕が、変なのかもしれない。  僕だって、大した傘を使っているわけじゃない。安物の、地味な深緑色の傘だ。もう何年使っているかわからない。金属部分には、ところどころ錆だって浮かんでいる。市來さんは、何もボロボロのビニール傘を使っているわけじゃない。  でも、やっぱり気になってしまうのだ。別に、ビニール傘を使うこれといった理由なんてないのかもしれない。  とは言えここ一ヶ月、僕が主に考えていることといったら市來さんのビニール傘なのだ。  我ながらちょっと気持ち悪い執着心だとは思うけど、こんなに気になるということは、やっぱり何か理由があるんじゃないかと思ってしまう。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加